FXライフ 2 ドルの歴史と世界のドル 基軸通貨

外国為替の世界で重要となるのが基軸通貨であることは言うまでもないだろう。国際間の貿易や資本取引の決済に多く用いられ、諸外国で対外準備資産として用意される通貨で、その時代にもっとも影響力が強い通貨が事実上の基軸通貨となる。

19世紀にはイギリスのポンドが、基軸通貨の地位にあった。逸早く産業革命を果たしたイギリスが「世界の工場」とも「世界の金融の中心地」とも呼ばれた頃の話である。しかし第2次大戦後は、その大きな経済力と政治力を背景に、米国ドルが基軸通貨の役割を担ってきた。


単に「ドル」と呼んだ場合、アメリカ合衆国ドル(USドル、米ドル)を指すことが多い。これはアメリカ合衆国ドルが石油取引など国際決済通貨として世界で最も多く利用されているためである。世界地図を見渡してみれば、USドルが国の通貨として扱われている国や地域が多いことに気づく。その地域は、グアム(アメリカ領)、北マリアナ諸島(アメリカ領)、ミクロネシア連邦、マーシャル諸島、東ティモール、パラオ、エクアドル、エルサルバドルなど、東南アジア、アフリカにまで及んでいる。ちなみに返還前の沖縄では、当然のことながらUSドルが通貨となっていた。わずか30数年前のことである。


実は「ドル」と呼ばれる通貨を使っている国はざっと数えただけで22もある。それだけ「ドル」が通貨の一般名詞として世界で使われているということだ。
(1)オーストラリア・ドル (2)バルバドス・ドル (3)バハマ・ドル (4)ベリーズ ・ドル (5)バミューダ・ドル (6)ブルネイ・ドル (7)カナダ ・ドル (8)カイマン諸島ドル (9)東カリブ・ドル (10)フィジー・ドル (11)ガイアナ・ドル
(12)香港ドル (13)ジャマイカ・ドル (14)リベリア・ドル (15)ナミビア・ドル(16)ニュージーランド・ドル (17)シンガポール・ドル (18)ソロモン諸島ドル(19)スリナム・ドル (20)ニュー台湾ドル (21)トリニダード・トバゴ・ドル、(22)ジンバブエ・ドル


ドル(ダラー)という名前は、ドイツで使われた歴史的通貨のターラー (Thaler) に由来すると言われている。ターラーは、16世紀にボヘミアで鋳造された銀貨の名前の短縮形で、品質の高さで知られた銀貨を指す。これが広く流通し、自国の通貨を「ドル」と呼ぶようになったのである。アメリカ合衆国の建国は1776年なので、USドル自体の歴史はまだ新しいと言える。


たとえば日本人に馴染みのある「香港ドル」(HKD)を見てみよう。現在、中国香港特別行政区の通貨だが、中国広東省の一部でも通用する。イギリスの植民地時代から中国に開かれた自由港として金融、流通の中心地であった香港は、通貨においても周囲の地域に大きな影響をもたらしてきたのである。マカオでは、当地の法定通貨であるマカオ・パタカの流通量を超え、香港ドルによる通貨代替が著しいという。マカオもまた中国の中の異国であることを証明する事象である。


香港では額面20ドル以上の紙幣は、香港上海銀行、スタンダードチャータード銀行(イギリス)、中国銀行(香港)の3行により発行されている。発行元の銀行によって図柄はまったく異なるが、それぞれの額面貨幣価値はもちろん同じだ。使用および流通において使い分ける必要はない。また、10ドル紙幣は上記の銀行による発行ではなく、香港特別行政区政府発行の法定紙幣のみ発行されている。つまり、通貨としては統一されているが、発行元が異なる紙幣がいくつも流通しているのである。


1983年以降、USドルに対するペッグ制 (自国の通貨と、米ドルなど特定の通貨との為替レートを一定に保つ制度) を施行しており、発券銀行が香港ドルを発券する際には相応の額のUSドルを預託する必要がある。しかし現在もペッグ制ではあるものの、2005年5月18日より目標相場圏制度が導入されたことにより、1USドル=7.75~7.85HKDの間の変動が認められている。やはりここでもUSドルの強い影響を受けていることがわかる。中国の一部とはいえ、香港はドルの国。必然的に金融に対する基本的な考え方もグローバルであると言えるだろう。


By Master K/益田 慶