FXライフ 18 ユーロの歴史と欧州の通貨 バルト三国
バルト海沿岸に位置するバルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)は欧州連合に加盟しているものの、各国ともユーロ導入には至っていない。歴史をふりかえると三国ともロシア帝国に支配され、ロシア革命ののち独立を果たしたものの、ソビエト連邦に併合された過去を持っている。古くから北欧諸国やドイツとのつながりが強く、経済開放後の北欧州資本の進出は目覚しい。それでは、今週と来週にわたって三国の通貨と産業の特徴、経済状況を紹介しよう。
バルト海のほぼ中心に位置するエストニアは、周囲をフィンランド、スウェーデン、ラトヴィア、ロシアに囲まれている。広さはデンマークよりやや大きく、日本の九州とほぼ同じ広さだ。通貨は1992年6月に導入されたクローン(EEK)。歴史的にドイツマルクとペッグ制で貨幣価値を保証してきたが、現在ではユーロとペッグ制を行っている。15.64クローン=1ユーロの固定相場制だ。
エストニアの歴史は、他国による占領と独立の歴史である。13世紀以来、デンマーク、ドイツの騎士団、スウェーデンといった外国勢力に支配されてきた。18世紀には「南下政策」を推進するロシア帝国に占領された。1917年にロシア革命が勃発すると、エストニアは独立を宣言。しかし1940年にソ連に、1941から1944年までナチス・ドイツに占領される。第二次世界大戦末期にソ連軍が再占領し、戦後はソ連に再併合され、15の共和国のひとつとなった。1988年には独立を目的とするエストニア人民戦線が設立。「ベルリンの壁」崩壊に象徴される東欧民主化の波はバルト三国にも及び、1990年に独立回復宣言を発表、翌年、ソ連が独立回復を承認し、国連に加盟した。
1994年のロシア軍撤退後は西欧諸国との関係を強め、2004年には欧州連合に加盟した。フィンランドから高速船で1時間半という立地からフィンランドとの関係が強い。バルト三国の中では最も経済状況が良く、特にIT産業が堅調である。これは「e-政府政策」によってネット・バンキングの普及が著しいことにも表われている。「ムーディーズ」や「スタンド・アド・プア」などの国際信用格付けは「A」を確保。しかし、一方で「外国企業依存型経済体質」と指摘されるように、北欧系資本の投資が盛んで、流通、金融・保険分野では外国資本が市場を占有している。
これは外国投資奨励政策の一環として、関税引き下げ・免除を実施(EU加盟に伴い一部関税を引き上げ)したことによる。それほど経済自由度指標が高いということは、政府による経済統制がほとんどなされていないことを物語っている。まるでアダム・スミスが『国富論』で述べた「自由競争によって『見えざる手』が働き、最大の繁栄がもたらされる」という言葉を実践するかのような経済政策である。
経済成長率は2000年7.9%、2001年6.5%、2002年7.2%、2003年6.7%、2004年7.8%、2005年9.8%と順調な推移だ。失業率は10%(2005年度)を記録しているが、建設業界を中心に労働力不足を懸念する声があるという。物価上昇率は、2005年は石油価格高騰や不動産価格上昇の煽りを受けて6.2%となった。
ロシアに大きく依存していた貿易は、1995年のEUとの自由貿易協定発効後はEUの占める割合が50%以上となり、2005年には、輸出の約80%、輸入の約70%をEU諸国が占めている。最大貿易相手国は、輸出でフィンランド、スウェーデン、ラトビア、輸入でフィンランド、ロシア、ドイツとなっている。さて、肝心のユーロ加盟だが、2004年に欧州通貨制度の為替相場メカニズム(ERM II)に参加し、2007年1月からのユーロ導入を目標に政策運営を行ってきたが、2006年4月、政府は石油価格の影響でインフレ基準の達成が困難となったことから、導入を見送った。現在早期のユーロ導入を目指している。
By Master K/益田 慶