ヨーロッパの財閥と企業グループ 34 欧州財閥の系譜 フィンランド財閥

2006年のフィンランド経済は、好調な輸出、旺盛な民間設備投資および堅調な個人消費により極めて好調で、「実質GDP成長率は5.9%に達した」と財務省は推定しています。先週紹介した北欧スウェーデンの最強の財閥ウォーレンバーグと提携している一族が隣国フィンランドにいます。フィンランドの有名企業といえば、真っ先にノキアの名が挙がることでしょう。ノキアの携帯電話、エリクソンの部品などを受託製造しているエルコテック社も世界進出を企て、現在日本、中国、インドへ進出しつつあります。


そのフィンランドで最大の売上げを誇る企業ノキア社の業態改革を進め、成功を収めた会長兼CEOヨルマ・オリラが2006年6月、ノキアの経営から身を引き、オランダのロイヤル・ダッチ・シェル会長に就任し、華麗なる転職を果たしましたが、世界の携帯電話販売台数の35%(2005年度)のシェアを誇る、この巨大なテレコム企業に影響を与えているのは、そのヨルマ・オリラではなく、16世紀にドイツから移住したエールンルーツ一族です。一族はあまり表に登場しませんが、ノキアのほかにも、フィンランドの基幹産業である木材をはじめ、生活用品、電力、造船、金融など諸事業に関係しています。


フィンランドを代表する産業である森林産業の企業名を挙げるなら、欧州最大手の製紙メーカーであるストゥーラエンソとUPMキュンメネが双璧です。
前者は売上げ規模で世界一。欧州を中心に森林・製紙企業グループを築いています。近年ではエストニアで最大級のシルベスタ製材所を買収したほか、中国にも進出しています。同社が購入し、使用権を有する中国・広西チワン族自治区の林地、人工原料林の面積は6万ヘクタールに達しています。同社のスポークスマンによれば、第1期プロジェクトはパルプ年産35万トン、紙年産45万トンを見込んでおり、2008年に生産を開始する予定とのことです。また、同社はチリ最大の林産企業アラウコと組んで、ブラジル植林地の共同所有に向けた話し合いを進めているようです。ストゥーラエンソはグローバル企業グループということがいえるでしょう。


一方のUPMキュンメネは、印刷用紙の世界シェアでナンバーワンの企業。生産拠点を世界15ヵ国に置き、森林産業全般に巨大なグループを築いています。ヘルシンキ及びニューヨーク証券取引所に上場し、2004年には日本にも進出し、現地法人を設立しました。この2社がノキア社に続くフィンランドの優良企業です。


フィンランドの隣国のノルウェーにも財閥が存在します。ノルウェーはEUに加盟しておらず、また石油開発や通信事業分野で国有企業が多いので経済動向がつかみにくい国ですが、産業全体に占める天然資源産業(石油、ガスなど)の比率が高く、意外にも世界屈指の石油輸出国なのです。そこで海運業が発展したのです。その海運業で成功したジョン・フレドリクセンはケタ違いの資産家です。2000年12月、億万長者の彼が私有する石油輸送大手ワールド・シップホールディング・グループ(WSG)が、シンガポールを代表する造船会社を買収。同社は一気に、石油・ガス産業向けの船舶を保有し、チャーター・運航を主要業務とする世界屈指のエネルギー輸送グループに駆け上がりました。


余談ですが、ドイツのIW経済研究所が発表した先進20カ国の比較調査でこんな結果が出ています。1900~99年の100年間、国民1人当たりの実質経済成長率は日本が1660%で1位。2位はノルウェー(1090%)、3位はフィンランド(1010%)となっています。北欧諸国は森林や石油資源に恵まれていたので、経済が成長したのでしょう。これからも目が離せない地域です。


By Master K/益田 慶