ヨーロッパの財閥と企業グループ 60 欧州財閥の系譜(36)

世界的に資源獲得競争が激化し、ウランの価格が急騰する中、日本はウランをめぐってなりふりかまわぬ外交を続けています。ウランの価格が上昇した背景には、二次供給(解体核高濃度ウラン)の減少、中国、インドなどの需要増加の見通し、10年後には需給が減少すると懸念されていることなどが挙げられます。


先週のコラムでロシアとウズベキスタンが、東シベリアにウラン濃縮の国際センターを建設する合意に達したことをお知らせしました。日本企業では、丸紅や東芝がウズベキスタンの原子炉導入のためのノウハウを提供しようと営業しています。


濃縮ウランの調達に関して、ロシアやウズベキスタンからの輸入に頼っているのは、日本だけではありません。実は米国の原子力エネルギー産業界でも発電用燃料に使用する濃縮ウランの国内調達率が落ち込み、約4割をロシアからの輸入に依存しているのです。旧ソ連製核兵器の廃棄で生じた余剰濃縮ウランを、米国が再利用したことから、米国は濃縮ウランについてロシアに供給を求めてきた経緯があります。これについて米国国内では「ロシアに頼りすぎるとエネルギー安保の見地から、不安定で危険とみられるだろう」という警告も発せられている。


ロシアでは濃縮ウラン関連事業は国家独占で、新興財閥の一人であるキリエンコ長官がトップを務める原子力庁傘下の国営「テフスナブエクスポルト」が濃縮ウランを輸出しています。キリエンコは、国営企業「アトムエネルゴプロム」社(原子力エネルギー産業社)の初代会長に選出されているので、何かの力によって富と権力が彼に集中していることを物語っています。


日本も実はウラン濃縮をテフスナブエクスポルト社に委託し、経済産業省はその取引を許可してきました。あまり知られていませんが、同社は濃縮ウラン輸出で世界市場のシェア約40%を占める世界最大のウラン輸出企業なのです。ロシア国内にはウラン濃縮の再処理センターが計4カ所あり、さらにウズベキスタンと合弁で、核燃料サイクル事業の国際センターを東シベリアに建設する計画を推進しています。ここに日本企業が技術協力を申し出ているという図式なのです。


「核を持たない」と宣言した日本が、ロシアから濃縮ウランを輸入し、中央アジアの資源大国ウズベキスタンの原子炉導入を支援していることは矛盾ではありません。エネルギー全体の依存度を石油から原子力に転換しないといけない日本のエネルギー事情を考えると、今後日本のカザフスタンへの依存はさらに大きくなるといえるでしょう。

現在、日本のウラン調達先は、オーストラリア、カナダで6割を占めています。そこで新たな供給ルートを開拓することが急務とされてきたのです。資源のない日本は、ウズベキスタンとの合意により、日本のウラン総需要量の3~4割の利権を獲得しようとしています。日本はロシアの巨大原子力グループ「アトムエネルゴプロム」に技術支援を申し出、その隣のウズベキスタンに原子炉導入計画を提案しているということです。


2006年、住友商事と関西電力がウラン鉱山開発権益を獲得し、カズアトムプロム社との合弁会社を設立。最大生産量年間1000トン(日本の需要の約1割)を見込んでいるとのことです。

また、日本の原子力発電所で発生した使用済み燃料をイギリス、フランスで再処理して回収したウランを再濃縮し、カザフスタンの工場で再転換・燃料加工し、日本を含む第三国に輸出するという青写真もできています。そうするとロシア―カザフスタン―欧州-カザフスタン経由でウランは循環していくのです。


ちなみにウズベキスタンの輸出品目は、地下資源とその加工品が7割を占めています。原油(49.4%)、鉄鋼(12.0%)、銅(7.5%)という状況で、原油(3606万トン)の産出量は世界シェア1.1%に達します。有機鉱物資源では、石炭(7218万トン、世界第10位、世界シェア1.9%)が国際的に力を持っています。石油や天然ガスを豊富に持つロシア同様、ウズベキスタンは日本にとって魅力的な国といえるでしょう。

By Master K/益田 慶