世界資源戦争17 新興産油国・石油企業の躍進 中国石油企業の躍進と政府の狙い
中国の石油関連企業が躍進している。国営の中国石油天然気集団(CNPC)は、パイプライン子会社の2008年の送油量が7000万トンを突破する見通しであることを発表した。2007年の送油量は6656万トンだったので、前年から345万トン増加することになる。同社は2001年から100億元(約1400億円)を投資し、西・中央アジア、北・西アフリカ、南米で石油開発を行い、アゼルバイジャン、オマーン、インドネシアなどで大型買収を実行してきた。これは国内の石油消費の増大に見合う国内の油田・ガス田の生産拡大が国難になったことを物語っている。中国には大慶油田という大型油田があるが、2000年を境に生産量が減少傾向にあり、労働環境がよくないことから労働者による大規模なデモも続いていた。またロシアに近い場所に位置することから輸送のコストや環境対策のコストが莫大にかかることから、中国は海外の油田に目を向けたのだろう。
国営の中国海洋石油総公司(CNOOC)は2002年にインドネシアの複数の油田権益を約600億円で一括購入して間もないが、今度はイラン北部のノースパースガス田の開発が決定したというニュースが入ってきた。イランはCNOOCが新設する天然ガスの陸揚げターミナル3カ所に1000万トンのガス供給を行うという。契約額は160億米ドルに達するとのことだ。
一方、CNPCの子会社で民営の中国石油天然気(ペトロチャイナ)は、新ガス田の発見に成功したことで、中国本土の天然ガスの生産量が今後10年のうちに2007年度の倍になると予測している。同社はシンガポールに数億ドル規模の製油所の建設を計画しているほかスーダン、トルクメニスタンに進出し、ガス田開発を、ロシア、ペルーでは油田開発を進めている。同社の2008年の投資額は1000億元(約1兆4000億円)を超えるという。
中国株に明るい投資家がペトロチャイナに注目したのは、2000年4月に香港(H株)、ニューヨーク(ADR)同時上場を果たしたのち、世界一の資産家である投資家ウォーレン・バフェットが経営する世界最大の投資持株会社パークシャー・ハサウェイが国外における筆頭株主となったことが引き金であった。「ウォーレン・バフェットが目をつけた銘柄なら安心だろう」と、多くの投資家がペトロチャイナに好感触を抱いたのだ。また、ペトロチャイナが社外取締役に外国人を起用し、顧問にキッシンジャー元米国国務長官を据えたことも投資家の心をくすぐった。同社の役員報酬が株価と連動することも知られている。そして2007年11月5日、上海株式市に上場し、同日、取引開始直後に新規公募価格(16.7元)を191%上回る48.62元をつけ、時価総額で世界最高を記録したこのように上場による資金調達が可能になったことで、中国石油企業はカントリーリスクの高い国へ投資するようになった。
中国は、ウズベキスタンからパイプラインを引いて天然ガスを買う計画を進めており、他の中央アジア諸国からも石油ガスを買っている。この動きが顕著になったのは、2001年10月に「上海協力機構」が設立してからだ。これはロシア、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、ウズベキスタンの6ヵ国による多国間協力組織で、第一回設立会議が上海で行われたことからそう呼ばれている。
中国とロシアは互いに警戒しつつも、中央アジアに対する欧米勢力の拡大を防ぐという点では利害が一致している。いわば「非米同盟」だ。ロシアの狙いはアラブ諸国や中国、ベネズエラなどの非米的な国々を連合して、エネルギーに関する新たな国際カルテルを作り、石油と天然ガスの世界的な利権を米英から奪うというものだろう。エネルギー消費国の中国には、エネルギー大国ロシアはもとより、中央アジアの石油・天然ガス産出国との関係を強化しておきたいという意図がある。
こういった背景を知っておれば、中国のウイグル自治区とカザフスタンを結ぶ全長962キロの「中国-カザフスタン石油パイプライン」が2006年に開通した意味が理解できるだろう。中国がパイプラインを通じて石油を輸入する初めてのケースで、パイプラインによる初期の年間輸送量は1000万トンだが、2010年には2000万トンに上昇するという。カザフスタンとロシアは現在、それぞれ50%の割合で石油を中国に提供している。
By Master K/益田 慶