世界資源戦争 20 新興産油国・石油企業の躍進 マレーシア国営企業ペトロナス
アジア太平洋地域は、ロシア、中東、アフリカに比べて大規模発見は少ないが、1996年~2005年の新規石油ガス発見量を地域別に見ると、発見量が世界で最も多い地域である。要因としてはライセンス付与や掘削数が多く、探鉱活動が活発であったことが挙げられる。アジア太平洋地域の2000年以降の新規石油発見で多かった国は、インドネシア、ベトナム、マレーシアだ。
マレーシアは、インドネシアと並ぶ伝統的な産油国で、1990年代半ば以降、生産量は横ばいだが、東マレーシア・サバ沖合海域で2002年から大規模発見が続き、インドネシアのカリマンタン島東沖合と並ぶ有望な深海油田地帯となった。2004年にはマレーシア国営企業の「ペトロナス」とオランダ「ロイヤル・ダッチ・シェル」をメインとする合弁企業「シェルマレーシア」が、パキスタンの「カリガリ石油」、米国の「コノコフィリップス」との共同事業として採掘中のサバ北西沖のガムス第1油田がマレーシア最大の原油埋蔵量を持つと発表した。
また、2007年半ばにマレーシア初の深海油田として生産を開始したキケー油田は、80%の権益を保有する米国「マーフィー石油」がオペレーターを務め、マレーシア国営企業ペトロナス子会社の「ペトロナスチャリガリ」が20%の権益を有する。2008年末には1日12万バレルの生産となる計画だ。マーフィー石油は、世界的な石油・ガス探鉱、生産会社で、米国と英国で精製、マーケティング事業を展開している会社で、現在、マレーシア以外では米国、エクアドル、カナダ西部、カナダ東岸、北海の英領海域、大西洋北縁海域を中心とし探鉱、生産事業を行っている。
さて、マレーシア国営企業ペトロナスだが、1974年にマレーシア政府によって設立され、国内の石油天然ガス資源の所有権をすべて保有、管理を行っている巨大企業だ。その事業領域は、石油・天然ガスの開発・生産から、石油精製、石油製品販売、ガス供給、LNG生産など多岐にわたる。 また、海外事業にも積極的で、現在では世界35カ国で事業を展開しており、他の国営石油会社のお手本とも言える存在となっている。クアラルンプールに建つ超高層ビル「ペトロナスツインタワー」(ハザマが建設した建築物世界第2位の高さ)に本社を置き、マレーシアの自動車メーカー「プロトン」の株主でもあることでも知られている。2007年には日本の潤滑油市場に参入を発表し、F1公式エンジンオイルであるSYNTIUMシリーズを発売した。
ペトロナス本体は現在も政府が100%所有する企業だが、グループ内には多くの合弁企業や上場企業を抱えている。液化天然ガス事業ではペトロナスがほとんどの株を握る「マレーシアLNG」を立ち上げ、サラワク沖のガス田で生産した天然ガスを日本向けに輸出してきた。この事業には三菱商事が参画している。1978年に第1プロジェクト、1992年に第2プロジェクトが、1995年に第3プロジェクトが稼働し、東京電力や東京ガス、大阪ガス、関西電力ら日本の大手ガス会社、電力会社が液化天然ガスを購入している。マレーシアLNG社から供給される液化天然ガスは日本の総輸入量の13%を占めている。マレーシアLNG社は、その拡大した生産量を背景に2003年の輸出量は1,520万トンになっている。これはインドネシア、アルジェリアに続く世界3位の規模である。
国内の液化天然ガス事業が軌道に乗った現在、ペトロナスは海外事業を積極化させている。海外事業を大きく飛躍させるきっかけとなったのが、エジプトでイタリアのエネルギー大手「エディソン」から大型のガス田とLNG液化事業を買収したことだ。これは「BGグループ」(英国)が中心となって進められているエジプト沖合のガス田開発とLNG液化事業の計画の一部で、このエジプトの液化天然ガスを輸出するために、ペトロナスはBGグループとともに英国にも受入基地の建設計画も進めている。
By Master K/益田 慶