外国為替再入門 7 リスクヘッジとスペキュレーション
為替取引の目的
外国為替取引が行われる理由は3つあります。
第1の理由は、実需による外貨需要です。外国旅行をする場合、必ず訪問国の通貨が必要になります。アメリカのような大きな国場合はドルだけあれば充分ですが、ユーロ導入前のヨーロッパやアジア旅行ではいくつもの小さな国が隣接していますから、さまざまな通貨が使われています。
香港、マカオ、中国では通貨が違いますし、シンガポール、マレーシア、インドネシアなども隣接していて往来も多いのですが通貨は別々です。
ヨーロッパ連合では、2008年1月現在、15カ国で統一通貨ユーロが導入されていますが、導入前は各国通貨を両替する必要があり、両替コストだけでも相当な金額が必要となっていました。統一通貨ユーロの導入により、決済コストの規模だけで131億~192億ユーロ、3兆円のコスト削減ができたと推定されています。
第2の理由は、貿易、投資など外国との経済活動によって生じる獲得外貨、支払邦貨の価値変動を安定化させるためです。輸出業者は、製品を輸出してから一定期間後、3ヶ月後、6ヶ月後に代金を代価で受け取ります。その間に為替が変動すると円貨に交換した時の価値と輸出時の価値とが違ってきます。これを為替変動リスクといいますが、このリスクをヘッジするために為替先物予約を組みます。将来の為替を事前に確定することで為替変動リスクを最小限に食いとめるのです。
第3の理由は、投機(スペキュレーション)です。リスクの大きさと期待収益の大きさは比例します。投機は損失の可能性を許容した上で、つまりリスクを取って大きな期待収益を狙う取引です。外国為替取引の90%以上はこの投機によるものです。投機的取引に批判的な声もありますが、リスクを取る投機家が存在しなければ健全なヘッジ市場は存在し得ません。為替マーケットにとって投機は必要な要素のひとつなのです。ヘッジファンドは投機取引をする機関投資家ですが、ヘッジとは本来はリスクを回避するという意味ですから、本来の意味からするとヘッジファンドは意味するところとは逆の投資スタイルであるといえます。ヘッジするではなくヘッジャーの受け手としてのヘッジファンドということになります。
外国為替取引は、同じマーケットで取引しているにもかかわらず、参加者の取引理由はさまざまです。呉越同舟、同床異夢なのですが、それによって為替マーケットという船は安定するのです。損失を最小限に防ごうとする実需家と為替変動利益を狙う投機家が存在するのですから、それぞれが有利な条件で取引しようとするならば、それぞれの事情で最も有利なタイミング、方法を知らなければなりません。リスクを取って為替変動利益を狙うヘッジファンドは、変動のトレンド、変動幅を分析する必要があります。ですから為替変動の要因分析、チャート分析手法の研究、市場、通貨の特徴などに精通しておく必要があるのです。
実需家と投機家では思い描くものが異なりますから、マーケットに与える影響も異なってきます。実需は一方的に買うか売るかのどちらかですからトレンドを形成します。貿易が黒字であれば常にその国通貨は買い圧力に晒されます。ヘッジファンドは短期間で利益をあげる必要があります。なぜなら決算までに利益を確定して、決算後に再度エントリーするといった取引を繰り返すからです。したがって投機筋による為替取引はボラティリティを形成することになります。長期変動の主要因は実需、短期変動の主要因は投機筋となるのです。もちろん背景には経済のファンダメンタルズがあってのことです。