世界資源戦争 44 課題の多いバイオエネルギー

トウモロコシ、サトウキビ、食用油、木材、ふん尿など、バイオマス(生物体)を原料にしてつくる燃料を総称して「バイオエネルギー」という。その代表がバイオエタノールとバイオディーゼル燃料だ。燃やしても二酸化炭素を排出しない、もしくは排出量が少ないため、太陽光や風力と並ぶ再生可能エネルギーの代表である。京都議定書の発効により二酸化炭素の削減義務を負うことになった17カ国がバイオエネルギーに着目したのはいうまでもない。


8%の削減を目指すEUでは、「自動車用バイオ燃料導入促進にかかわる指令」を発令し、運輸部門で販売される燃料に占めるバイオ燃料のシェアを2010年までに5.75%とすることに決めた。フランスやスペインでは、バイオエタノールを利用したETBE(エチル・ターシャリー・ブチル・エーテル)を5%配合した混合ガソリンが、スウェーデンではエタノール10%混合ガソリンが販売された。フランスでは15%までETBEをガソリンに混合することが法律で認められた。バイオエタノールとは、サトウキビやトウモロコシなどのバイオマスを発酵させ、蒸留して生産されるエタノールのことだ。


一方、アメリカでは大気汚染を削減する効果のあるとしてMTBE(メチル・ターシャリー・ブチル・エーテル)が普及した。しかし、地中に埋めたガソリンタンクから漏れ出した、地下水を汚染したことから、使用が敬遠された。そこで、トウモロコシを原料とするバイオエタノールが注目されるようになる。そして2001年に発表された「国家エネルギー政策」においてバイオエタノール導入促進が決まった。トウモロコシ・エタノールの生産量は、2000年には16億ガロンだったが、 2005年には40ガロンに拡大し、アメリカはブラジルを抜いて世界最大のエタノール生産国へと躍進した。2006年は51億ガロン、2007年は60億ガロンを突破した。


2006年11月、アメリカ農務省は、2016年にはトウモロコシ・エタノール生産量は120億ガロンまで増えるという見解を発表。そして2007年1月、ブッシュ大統領の一般教科書演説で、2016年の予想生産量が120億ガロンから一気に350億ガロンに引き上げられたと発表。

これによって原材料のトウモロコシのエタノール向け需要も、2001年以降一貫して増加した。2006~2007年度のトウモロコシの需要のうち、18%がエタノール向けだった。これは米国が海外に輸出している量に匹敵する。また、ブッシュの一般教科書演説以降、他の農作物からトウモロコシへの転作が相次いだ。米国ではトウモロコシ需要におけるエタノールのシェアが18%から30%に上昇する見込みだ。そうすると、アメリカのトウモロコシは内需だけで9割が消費され、輸出にまわるのは残りの1割になってしまう。

2004年に始まった原油高、それに続く資源高によって穀物価格が急騰したのは周知のごとく。また、サブプライムローン問題で行き場を失った投機マネーがレアメタルや穀物市場に注がれたことも大きな影響を与えた。日本では、トウモロコシは家畜の飼料として利用されている。トウモロコシの輸入価格が上がると、肉や牛肉、卵、チーズ、バター、ヨーグルト、アイスクリームの価格に大きな影響が生まれる。そして事実、2007年末から日本では乳製品が値上げされた。中国は穀物相場の高騰を理由に、バイオ燃料の導入計画を見直す方針を打ち出している。

しかし、トウモロコシ相場が上昇することで、最も大きな影響を受けるのは、地球全体の人口の7割以上を占める貧困層だ。世界各国で穀物の奪い合いが起こり、穀物生産に必要な水資源の奪い合いにもつながる。トウモロコシを原料にして地球にやさしい燃料をつくりだすことが、アフリカやアジアの発展途上国にはやさしくない結果となっている。これも「世界資源戦争」の側面である。


By Master K/益田 慶