FXライフ 59 南アジアの通貨 バングラデシュとブータン

インドの東側に位置するバングラデシュは、イスラム教徒の国。インド独立運動によって、ヒンドゥー教地域はインド、イスラム教地域はパキスタンとして分離独立することになった。インドを挟んで東西に分かれたパキスタンのうち東パキスタンが現在のバングラデシュである。1971年にパキスタンから独立した。通貨は、タカ(BDT)。ほとんどの紙幣をバングラデシュ銀行が発行し、いくつかの紙幣とすべての硬貨をバングラデシュ政府が発行している。


日本の4割ほどの面積に1億4000万人が住むバングラデシュは、世界で最も人口密度の高い貧困国。多くの国から援助を受けているが、人口増加、政治汚職、台風や洪水など問題が重なり、貧困から脱することができずにいる。なかでも2004年に起こった洪水で国土の60%が水害にあい、多くの農作物が被害にあった。2000万人が食料援助を受ける事態となった。


最悪の事態に見舞われたにもかかわらず、2007年度の経済成長率が6.5%に達した背景には、農業分野の成長回復や製造業・サービス業の安定成長といった要因があげられる。中国より低い労働コストによって軽工業製品の工場がバングラデシュへ移行してきているのが大きい。それでも、縫製品輸出や海外労働者の海外送金への依存度が高く、構造的に脆弱であることに変わりない。産業の多角化と電力・道路などの基礎インフラの整備が課題となっている。


ちなみに新年度予算案では、全体の57%が貧困削減関連事業に当てられ、教育・IT技術分野(15.6%)、運輸・通信(9.1%)、地方自治・農村開発(8.6%)、農業(9.1%)、防衛(6.8%)に優先的に配分されている。


チベット仏教を国教とするブータン王国は、近代化に対し独自の立場を取っている。前国王が提唱した「国民総合総幸福度」という概念は世界から注目を集めている。ブータンは経済成長より、環境と伝統文化を保護することを重要と考えているのである。


通貨は、ニュルタム(BTM)。貿易相手国はインドが8割を占めるため、インド・ルピーとの結びつきが強い。産業の中心は農業と林業だ。9割近い人口が自給的な農業、放牧業に従事している。ブータンの農業は自家消費が目的で、自給率が高いのが特徴。しかし生産性が低く、農民人口が増えているにもかかわらず、生産量は微減している。


険しい山々が地形の多くを占めるため、道路の建設や他のインフラの建設は難しく、またコストがかかる。道路建設のような開発事業の大部分は、インド人の移住労働者に頼っている。工業生産は小なく技術的には遅れており、大部分の生産は家内工業である。


文化・環境保護の観点から推進される観光政策は、外国人観光客の入国を制限したり、バックパッカーとしての入国を原則禁止したりするなど、やや不自由な方向に向かっている。また2004年には、環境保護と仏教教義的な背景から、世界初の「禁煙国家」を宣言。煙草の販売は全面的に禁止された。

じつはブータン最大の輸出品は電力だ。国土がヒマラヤの山岳地にありことを生かし、豊富な水力による発電を実施している。そして隣国のインドに電力を売却し、外貨を得ているのである。2006年のGDPは9.4%。輸出入ともインドがほとんどを占め、経済面でインドと強い結びつきがあることがわかる。

日本人からすれば、スローライフを体現しているかのように見えるブータンだが、南部居住のネパール系住民が国外に脱出して難民化しているほか、チベット系の民族衣装着用の強制などナショナリズムをあおる政策が随所に見受けられる。経済成長を目指さず、国民の幸福度を追求する政策がどこまで貫くことができるのか、あるいは新たなバリエーションが広がっていくのか、楽しみな国である。


By Master K/益田 慶