100年企業 53 産業別100年企業 広告代理店・出版社・書店編
広告代理業自体が新しい業態なので、広告代理店に「100年企業」は存在しないと思いがちだが、誰もが耳にしたことのあるあの企業が唯一該当する。100年間も業界ナンバーワンの売上を築いている「電通」だ。同社は前身である「日本広告」とそれに併設した「電報通信社」(ともに1901年創業)の設立をもって創業としている。
創業者の光永星郎は幕末に熊本県で生まれ、日清戦争時に従軍記者として中国に渡った。通信手段の不備により、せっかく書いた記事の掲載が大幅に遅れたことから通信社の設立を構想する。同時に広告代理店の設立を図ったことが光永の先見性といえよう。1907年にニュース通信社「日本電報通信社」を興し、自身が設立した電報通信社と日本広告を合併。この日本電報通信社を略して「電通」。1955年に電通と改めた。
1973年度の取扱高で同社が初の世界1位となる。創立100周年にあたる2001年、東証1部へ株式上場。2008年3月期の連結売上高は約2兆2519億円。現在、広告からイベント、映画制作などマスメディアにかかわる巨大なグループを形成している。
一方、有名書店チェーンには老舗が多い。1869年創業の「丸善」は書店、出版社、専門商社という三つの顔を併せ持つ企業で、さらに店舗内装事業も手がけている。創業者は福沢諭吉門下の早矢仕有的(はやしゆうてき)。創業時の社名は「丸屋商社」であった。丸善の店舗には、書店と衣料・雑貨・文具などの輸入品を扱う店舗がある。
前者では洋書の扱いが有名で、日本の書店にごく普通に洋書が並ぶようになったのは同社が道を開いてくれたからである。輸入品の小売については専門商社ならではの品揃えで、西洋の文化をいち早く紹介してくれた企業といえよう。日本最初の国産マッチの独占販売やオリジナル「丸善インキ」を発売するなど、現在の小売業が挑んでいる販売方法を最初に手がけたのも同社である。出版部門では、主に理工系・美術系の専門書・教科書・一般書を発行。マルチメディア、電子出版なども扱っている。ちなみに創業者の早矢仕が考案したから「ハヤシライス」と呼ばれるようになったという説があり、丸善ブランドにはちゃんと保存用ハヤシライスがある。
1881年創業の「三省堂書店」は、もともと古書店として神田神保町で誕生した。創業者の亀井忠一が海外の言葉に関心が高く、辞書編纂の業務を開始。1884年に出版事業に進出。出版・印刷部門は1915年に分離独立し、辞書や教科書の出版で知られる「三省堂」が設立された。同社も1881年も創業としている。書店部門はその後、全国に直営店とFC店を展開。アメリカにも直営店を出店している。丸善、三省堂書店と並んで大手書店チェーンといえば「紀伊国屋書店」の名前が挙がる。名前から想像すると江戸時代の創業と思えるものの、じつは同社は1927年創業なので「100年企業」ではない。
出版社の「100年企業」は、丸善、三省堂以外では、日記帳やビジネス手帳の版元として知られる「博文館新社」が1887年創業。1896年創業の「明治書院」と「新潮社」が該当する。前者は国文学・漢文学・国語教育の専門会社として創業し、現在は高校の検定教科書を発行している。新潮社は前身の「新声社」が起源で、1914年に新潮文庫を発刊し、書籍の大衆化に大きく貢献した。
2009年にちょうど創業100年を迎えるのが「講談社」だ。オーナー一族の野間家が100年間経営に携わっている。同じ老舗でも岩波書店は1913年、文藝春秋は1923年、旺文社は1931年の創業。新聞社と比べると、出版社の老舗企業は意外に少ない。特に出版不況と呼ばれる昨今は、中小出版社の廃業が続いている。今後は大手同士の合併や買収など、出版社も淘汰されていく可能性が高い。
By Master K/益田 慶