100年企業 56 産業別100年企業 物流会社編
物流業界は、空・海・陸というルートから航空貨物輸送、海運、陸運などに分類でき、業態で分けるなら運輸業、貨物取扱業、以前紹介した倉庫業などがある。物流は、移動手段で分類すると、航空、海運、陸運に大別できる。飛行機やトラック、貨物列車が普及する前に物流を牽引したのが海運業だ。
最も歴史があるのが、1801年創業の「鈴与」(静岡県)。物流・運輸業を核にする企業グループで、初代鈴木与平が現在の清水港で船舶を使った物流業を始めたのが起源だ。同社は1876年に郵便汽船三菱社(「日本郵船」の前身)の積荷扱店となったことで大きく飛躍した。近年、航空事業にも進出している。
鈴与の次に歴史のあるのは、倉庫業で紹介した、神戸港を本拠地に「上組(かみぐみ)」(創業1867年)だ。開港した神戸港に設けられた神戸運上所に出入りして貨物の運搬を行なう「神戸浜仲」としてスタートしたのがルーツ。1873年、「上組」に改称。現在は陸運、海運、航空サービスなど関連子会社を抱え、中国、台湾、シンガポール、タイ、ベトナム、マレーシアなどアジアに海外拠点を設けている。
1869年創業の「上野グループ」は、石油の運送を中心に展開する大手。上野金次郎が横浜で船荷取扱所兼旅人宿「丸井屋」を開いたのが源流。その後、帆船問屋を始め、今日の「昭和シェル石油」の前身であったサミエル商会によって興されたライジングサン社から石油輸送を依頼されたことが事業拡大の弾みとなった。現在、海運業・倉庫業の「上野トランステック」を中心に、グループ会社が石油製品の貯蔵・石油製品販売、タンクローリーによる石油製品や石油化学製品の輸送などを営んでいる。
神戸市の「八馬汽船」は、米穀商で財を成した初代八馬兼介が1878年に八馬商店船舶部を設立したのがルーツだ。ドイツ汽船ほか中古汽船を次々に購入し、中堅社外船主として成長。八馬家は戦前には、家業の海運業のほか、西宮銀行、武庫銀行の大株主として取締役を務めるなど銀行業にも進出し、八馬財閥を形成した。戦後、八馬家は「八馬汽船」と「多聞酒造」を2本柱に切り替えたが、後者は経営難で会社更生法の適用となり、「多聞」の商標及び製造・販売は「大関」に譲渡された。
1880年創業の「鴻池運輸」は、社名から鴻池財閥の関連企業かと連想しがちだが、資本関係はない。鴻池忠治朗が1871年に大阪に設立した建築会社「鴻池組」が母体。同社の運輸部門が分社化されて生まれた。海上運輸、港湾運輸、引越サービスのほか航空貨物運送にも進出している。横浜市の「宇徳」(1890年創業)は宇都宮徳蔵が横浜に「宇都宮徳蔵回漕店」を創業したのがルーツ。海運業、倉庫業を展開する総合物流企業である。
1893年に誕生した「日本郵船」は、三菱グループの中心をなす企業にして、世界第2位の海運会社。連結売上高は2兆5846億円。航空・海運・倉庫・不動産・観光など企業グループを築いている。そのライバル「商船三井」は、三井物産から分社化したのが1942年なので100年企業に満たない。
1899年創業の「飯野海運」は、飯野寅吉が京都府舞鶴市で石炭運送と港湾荷役業の「飯野商会」を立ち上げたのがルーツ。戦後に定期航路の運行を手がけ、その後、不動産業にも進出した。大手タンカーの船主であり、65社のグループ会社を抱える飯野グループを築いている。
商船三井が主要株主となっている「乾汽船」は1908年、三代目・乾新兵衛が神戸市に立ち上げた海運会社。北米、カナダ、オーストラリアからの穀物、北米やニュージーランドからの木材など海上輸送とグループ会社による船舶貸渡業を展開している。同社は神戸で興った企業だが、2001年に本社を東京に移転した。
物流大手の「100年企業」には、ほかに倉庫編で紹介した三菱倉庫、渋沢倉庫、住友倉庫、川西倉庫などの倉庫業をメインとする企業も該当する。ちなみに佐川急便、ヤマト運輸など小口荷物をメインに扱う大手陸運事業者は歴史が浅く、ともに戦後の創業である。
By Master K/益田 慶